大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和56(あ)1481 決定

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人安田寿朗の上告趣意は、本件は、被告人が、先行車との車間距離を約一二

メートルに保ち、共に時速約五〇キロメートルで進行中、交差点内で先行車が急制

動の措置をとつたため追突したものであるところ、原判決が、先行車の交差点内急

停止は予見しえたものであるとし、被告人が右急停止はないものと信じたことにつ

き信頼の原則を適用せず、右車間距離の不保持を過失の内容として被告人の刑事責

任を肯定したことは、最高裁判所昭和四二年(あ)第一五六三号同四三年六月一三

日第一小法廷判決(裁判集刑事一六七号六〇一頁)、同四八年(あ)第二八一号同

年一二月二五日第三小法廷判決(裁判集刑事一九〇号一〇二一頁)に違反する、と

いうにあると解される。

しかしながら、右判例は、いずれも本件と事案を異にして適切でないから、所論

は適法な上告理由にあたらない。

なお、他車両に追従する車両の運転者にとつて、先行車が急制動の措置をとるか

もしれないことを予測し、常に追突を避けうる態勢をとつて運転することは、最も

基本的かつ重要な注意義務であり、たとい交差点内であつても、先行車が急制動の

措置をとることはないと信頼して運転することは許されないから、本件において、

先行車が交差点内で急制動の措置をとつたとしても、これを理由として被告人の過

失責任を否定することはできない。

また、追従車の運転者が、道路交通法二六条の要求する車間距離(最高裁判所昭

和四二年(あ)第一四九四号同四三年三月一六日第二小法廷決定・刑集二二巻三号

八一頁参照)を保持しないで走行したとしても、そのことがその際生じた追突と必

ずしも常に因果関係ある過失となるものではないが、時速約五〇キロメートルで走

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行していた普通乗用車同士の車間距離が約一二メートルにすぎない本件事実関係の

下においては、追突の原因となつた過失が右車間距離での走行にあるとした原判決

の判断は相当である。

よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、

主文のとおり決定する。

昭和五七年一二月一六日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 宮 崎 梧 一

裁判官 木 下 忠 良

裁判官 鹽 野 宜 慶

裁判官 大 橋 進

裁判官 牧 圭 次

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